葉酸はいつから飲む?妊娠前から必要な理由と正しい摂取量|海外の研究をもとに助産師が解説

Pregnancy Care | 桜わね助産院
「葉酸は妊娠してから飲めばいいの?」
「妊娠が分かってから飲み始めたけれど、遅かった?」
「妊娠中はずっと飲み続けた方がいいの?」
妊活中や妊娠初期のお母さんから、葉酸についてご質問をいただくことがあります。
葉酸は、赤ちゃんの健やかな発育に欠かせない大切な栄養素です。
特に妊娠前から妊娠初期にかけて十分な葉酸を摂取することは、赤ちゃんの神経管閉鎖障害の発症リスクを低減することが、海外の研究でも示されています。
今回は、海外の系統的レビュー・メタ解析や公的ガイドラインをもとに、葉酸の役割、飲み始める時期、推奨される摂取量について、助産師の視点から分かりやすく解説します。
① そもそも葉酸とは?
葉酸は、ビタミンB群の一種で、ビタミンB9とも呼ばれる水溶性ビタミンです。
細胞分裂やDNAの合成、赤血球の形成などに関わる重要な栄養素で、赤ちゃんの身体が形成されていく妊娠初期には、特に重要な役割を果たします。
葉酸は、ほうれん草やブロッコリー、枝豆などの食品にも含まれています。
ただし、食品由来の葉酸は、調理や吸収率の影響を受けるため、妊娠前から妊娠初期には、通常の食事に加えてサプリメントなどから葉酸を摂取することが推奨されています。
② 葉酸と神経管閉鎖障害の関係
妊娠初期には、赤ちゃんの脳や脊髄のもとになる「神経管」という構造が形成されます。
神経管は、受精後およそ28日までに閉鎖するため、多くの女性が妊娠に気づく頃には、すでに重要な発達過程が進んでいます。
この神経管が正常に閉鎖されないことで起こる先天性疾患を、神経管閉鎖障害と呼びます。
代表的なものには、二分脊椎や無脳症などがあります。
神経管閉鎖障害には遺伝的要因や栄養状態、母体の健康状態など複数の要因が関わりますが、妊娠前後の適切な葉酸摂取によって、その発症リスクを低減できることが明らかになっています。
③ 海外のメタ解析では、どのような結果が出ているの?
葉酸の予防効果については、長年にわたり世界中で研究が行われています。
2015年|コクラン・システマティックレビュー
De-Regilらによるコクランレビューでは、妊娠前後の葉酸摂取による神経管閉鎖障害の予防効果が検討されました。
その結果、葉酸の補充は神経管閉鎖障害の予防に有効であると結論づけられています。
特に、過去に神経管閉鎖障害のある妊娠を経験した方の再発予防について、明確な効果が示されました。
2024年|海外のアンブレラレビュー
2024年に発表された研究では、10件の系統的レビュー・メタ解析、合計約29万7,000人分の研究データが統合されました。
葉酸またはマルチビタミンの摂取は、神経管閉鎖障害のリスク低下と関連しており、統合効果推定値は0.43と報告されています。
これは、葉酸摂取の重要性を裏づける結果のひとつです。
ただし、研究間のばらつきが大きく、個人のリスクが必ず57%減少するという意味ではありません。
葉酸を摂取すればすべての神経管閉鎖障害を防げるわけではありませんが、医学的に確立された重要な予防策のひとつと考えられています。
④ 葉酸はいつから飲み始めるのが理想?
妊娠を希望する少なくとも1か月前からの摂取が推奨されています。
日本の厚生労働省や米国疾病予防管理センター(CDC)でも、妊娠前からの葉酸摂取が推奨されています。
その理由は、赤ちゃんの神経管が妊娠の非常に早い段階で形成されるためです。
妊娠が判明してからでは、神経管の形成がすでに進んでいる場合があります。
そのため、妊娠を希望した時点で、葉酸の摂取を意識することが大切です。
特に、妊娠を計画している方や妊活中の方には、妊娠前から葉酸サプリメントを取り入れることをおすすめします。
⑤ 1日に必要な葉酸はどのくらい?
日本では、神経管閉鎖障害のリスク低減を目的として、妊娠を計画している女性や妊娠初期の女性に、通常の食事からの葉酸摂取に加え、
サプリメントなどから1日400μg(0.4mg)の葉酸を摂取すること
が推奨されています。
ここで注意したいのは、400μgは通常の食事に追加して摂取する量ということです。
葉酸は食品にも含まれていますが、妊娠前から妊娠初期の神経管閉鎖障害予防では、サプリメントなどに含まれる葉酸の摂取が重視されています。
また、葉酸を多く摂取すればするほど予防効果が高くなるというわけではありません。
複数のサプリメントを併用すると、知らないうちに葉酸を過剰に摂取する可能性があります。
製品の含有量を確認し、推奨量を守ることが大切です。
なお、過去に神経管閉鎖障害のある妊娠を経験した方や、特定の薬剤を使用している方などでは、通常とは異なる葉酸摂取量が必要になる場合があります。
このような場合は、自己判断で増量せず、妊娠前から主治医に相談してください。
⑥ 葉酸は妊娠何週まで飲むの?
神経管閉鎖障害のリスク低減という観点では、妊娠前から妊娠初期、特に妊娠3か月頃までの葉酸摂取が重要です。
ただし、葉酸そのものが妊娠初期以降に不要になるわけではありません。
妊娠中期・後期にも、赤血球の形成や細胞の成長などに葉酸は必要です。
そのため、妊娠期間を通して、葉酸を含む栄養素をバランスよく摂取することが大切です。
サプリメントをいつまで継続するかは、食生活や栄養状態、使用している製品などを踏まえ、主治医や助産師に相談するとよいでしょう。
⑦ 妊娠してから飲み始めても大丈夫?
「葉酸が大切だと知らず、妊娠してから飲み始めました」
「妊娠8週になってから、初めて葉酸サプリメントを購入しました」
このようなご相談もあります。
確かに、神経管閉鎖障害のリスク低減という点では、妊娠前からの摂取が理想的です。
しかし、妊娠が分かってから飲み始めたからといって、赤ちゃんに問題が起こるという意味ではありません。
神経管閉鎖障害にはさまざまな要因が関わり、葉酸を飲んでいなかったことだけで発症が決まるわけではありません。
また、葉酸は妊娠中も必要な栄養素です。
妊娠してから葉酸の大切さを知った方も、過去の摂取状況を必要以上に心配するより、これからの栄養管理を大切にしていきましょう。
不安なことがあれば、妊婦健診の際に医師や助産師へ相談してください。
⑧ 葉酸を多く含む食品は?
葉酸は、身近な食品からも摂取することができます。
例えば、
ほうれん草
ブロッコリー
枝豆
アスパラガス
アボカド
いちご
などです。
これらの食品には、葉酸以外にもさまざまなビタミンやミネラル、食物繊維などが含まれています。
妊娠中は、特定の栄養素だけに注目するのではなく、食事全体のバランスを整えることが大切です。
つわりなどで食事が十分に取れない時期は、無理をせず、食べられるものを少しずつ取り入れてください。
最後に|妊娠前から始める、小さな準備
妊娠は、赤ちゃんと出会うまでの大切な時間です。
葉酸を摂取することは、その準備のひとつ。
妊娠前から葉酸を意識することで、赤ちゃんの神経管閉鎖障害のリスクを低減できる可能性があります。
一方で、妊娠してから葉酸の大切さを知ったお母さんも、ご自身を責める必要はありません。
妊娠中の健康管理は、葉酸だけで決まるものではないからです。
バランスのよい食事、十分な休息、適切な妊婦健診。
できることを、ひとつずつ積み重ねていきましょう。
桜わね助産院では、妊娠前から産後まで、お母さんと赤ちゃんの健康を大切にした情報をお届けしています。
お母さんが安心して妊娠・出産を迎えられることを、心から願っています。
桜わね助産院 杉山
参考文献
De-Regil LM, Peña-Rosas JP, Fernández-Gaxiola AC, Rayco-Solon P. (2015). Effects and safety of periconceptional oral folate supplementation for preventing birth defects. Cochrane Database of Systematic Reviews, Issue 12, CD007950.
Preconception Folic Acid and Multivitamin Supplementation for the Prevention of Neural Tube Defect: An Umbrella Review of Systematic Review and Meta-analysis. (2024). Neuroepidemiology.
Folic Acid Supplementation to Prevent Neural Tube Defects: Updated Evidence Report and Systematic Review for the US Preventive Services Task Force. (2023). JAMA.
Centers for Disease Control and Prevention (CDC). (2026). Folic Acid: Facts for Clinicians.
厚生労働省.「葉酸とサプリメント―神経管閉鎖障害のリスク低減に対する効果」e-ヘルスネット.
※本記事は2026年10月15日時点で確認できる医学文献および公的機関の情報をもとに作成しています。個々の妊娠経過や基礎疾患、服薬状況によって適切な対応は異なります。葉酸の摂取量やサプリメントの使用について不安がある場合は、主治医にご相談ください。



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