乳腺炎かもしれないと思ったら。 おっぱいの痛みと発熱。 知っておきたい、正しいケアのこと。
Breast Care | 桜わね助産院

授乳中、突然おっぱいが痛くなった。
触れると熱を持っていて、身体もだるい。熱を測ると、38℃を超えている。
「もしかして、乳腺炎?」
そんなとき、赤ちゃんのお世話をしながら、ご自身の体調まで気遣うことは決して簡単ではありません。
乳腺炎は、授乳期に起こる乳房の炎症です。
適切に対処することで改善する場合もありますが、細菌感染が加わり、医療機関での治療が必要になることもあります。
今回は、乳腺炎について、現在の医学的な知見をもとにお伝えします。
01|乳腺炎とは?
乳腺炎とは、乳房に炎症が起こった状態です。
乳管の周囲に炎症や腫れが生じることから始まり、場合によっては細菌感染を伴う乳腺炎へ進行することがあります。
さらに、炎症が悪化すると、乳房の内部に膿がたまる「乳房膿瘍(にゅうぼうのうよう)」を形成することもあります。
つまり、乳腺炎は、単純に「母乳が詰まっている」「細菌が感染している」という一つの状態だけではありません。
炎症の程度や感染の有無によって、適切な対応が異なります。
02|こんな症状はありませんか?
乳腺炎では、次のような症状がみられることがあります。
乳房の一部が赤くなっている
触れると熱感や痛みがある
乳房に硬い部分がある
発熱や悪寒がある
インフルエンザのような倦怠感や関節痛がある
これらの症状は、突然現れることもあります。
なお、発熱があるからといって、必ずしも細菌感染による乳腺炎とは限りません。
症状の経過と乳房の状態を総合的に確認することが重要です。
03|乳腺炎になったら。ご自宅でできること
まず大切なのは、炎症を悪化させないことです。
♡01 冷やす
痛みや腫れのある部分に、タオルで包んだ保冷剤などを当て、心地よい範囲で冷却します。
冷却は炎症に伴う痛みや腫れを軽減する方法の一つです。
♡02 強く揉まない
しこりをなくそうとして、乳房を強く押したり、揉みほぐしたりすることは避けましょう。
深部への強いマッサージは、組織を傷つけ、炎症や腫れを悪化させる可能性があります。
♡03 必要以上に搾乳しない
母乳を完全に出し切ろうとする必要はありません。
過剰な搾乳によって母乳の産生が増え、かえって症状が長引くことがあります。
赤ちゃんの普段の授乳ペースを基本にし、必要な分だけ搾乳することが大切です。
♡04 十分に休む
身体の回復には、休息と水分補給が欠かせません。
必要に応じて、医師や薬剤師に確認のうえ、授乳中に使用できる鎮痛・解熱薬について相談しましょう。
これらは、ABMの乳腺炎診療プロトコルおよび英国NHSの患者向け情報を参考にしています。
04|乳腺炎でも、授乳は続けられますか?
多くの場合、乳腺炎になっても授乳を続けることができます。
細菌性乳腺炎であっても、通常は患側の乳房から母乳を与えることが可能です。
ただし、痛みが強い場合や乳輪周囲の腫れが著しい場合などは、授乳方法の調整が必要になることがあります。
また、授乳を続けたい方、混合授乳を希望される方、卒乳を考えている方では、ケアの方針も異なります。
大切なのは、お母様のご希望と乳房の状態に合わせて、無理のない方法を選ぶことです。
05|いつ、医療機関を受診すればよいのでしょうか?
ご自宅でのケアを行っても、12〜24時間以内に改善がみられない場合は、医療機関に相談しましょう。
また、高熱や強い悪寒がある、急速に症状が悪化する、非常に具合が悪い場合は、時間を待たずに受診してください。
意識の異常や著しい衰弱などがある場合は、救急受診が必要です。
細菌感染が疑われる場合には、抗菌薬による治療が必要になることがあります。
しこりが残る、あるいは抗菌薬を使用しても改善しない場合には、乳房膿瘍などを確認するために超音波検査が必要になることもあります。
→桜わね助産院の医療連携について
桜わね助産院では、乳房の状態を確認し、必要に応じて連携先の産婦人科へおつなぎすることが可能です。
医師の診察によりお薬が必要と判断された場合には、処方を受けていただけます。
※対応は産婦人科の診療日・診療時間内に限ります。症状が強い場合や急速に悪化している場合は、診療時間を待たずに医療機関へご相談ください。
06|お母さんへ。無理をしないという選択を。
乳腺炎のつらさは、乳房の痛みだけではありません。
発熱や倦怠感のなかでも、赤ちゃんのお世話は続いていきます。
授乳を続けたいというお気持ちも、少し休みたいというお気持ちも、どちらも大切にしていただきたいと思います。
体調が優れないときには、ご家族や周囲の方に赤ちゃんのお世話をお願いすることも、一つの選択です。
お母様が安心して休める時間を持つこと。
それもまた、産後のケアの大切な一部だと、私たちは考えています。
桜わね助産院では、助産師によるご相談と赤ちゃんの一時お預かりを通じて、産後のお母様をサポートしています。
乳房の痛みや発熱がある場合は、まず医療機関で適切な診断・治療を受けていただき、必要に応じて当院のサポートをご利用ください。
お母様の休息が、赤ちゃんとの穏やかな時間につながりますように。
桜わね助産院 杉山
参考文献
本文の医学的な記述は、以下の資料を参考に作成しています。
Academy of Breastfeeding Medicine (2022)
Mitchell KB, et al. Clinical Protocol #36: The Mastitis Spectrum, Revised 2022. Breastfeeding Medicine. 17(5):360–376.
DOI: 10.1089/bfm.2022.29207.kbm
National Health Service (NHS)
Mastitis
American College of Obstetricians and Gynecologists (ACOG, 2021)
Breastfeeding Challenges. Committee Opinion No. 820.
American Academy of Family Physicians (2024)
Mastitis: Rapid Evidence Review.
※本記事は一般的な医療情報の提供を目的としたものであり、個別の診断や治療に代わるものではありません。



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